シェラの在籍するセント・ソフィア大学では、本人の希望と能力によって一年生の頃からでもゼミに参加出来る。
教員によっては『ゼミ入門』のようなゼミを開講することもある。
研究機関である大学は、在籍する学生であっても研究者だ。
文献を読み、分析と解釈を繰り返し、史学科では時に合宿で発掘調査などを行って真理への道を辿る。

──というのは、建前であることが少なくない。

二泊三日の『合宿』と称した旅行に来ているシェラたち。
紅葉の美しい山の中で、のんびり温泉に浸かり、美味しいものを食べ、──多少は学問にも目を向ける。
シェラたちの所属するゼミの教授が無類の旅行好きであることもあり、年にニ、三回はこのゼミ合宿が開かれる。
それでも、一応は学問のための合宿というのが建前であり、そのためのレポートなども提出する必要がある。
今回の合宿では、初日に近くの遺跡の発掘調査を行うというのが名目である。
意外と、こういう『土いじり』のような作業が好きな男子は多い。
化石が出てこようものなら、それがたとえアンモナイトだろうと、恐竜の化石並の大騒ぎをするほどである。
女子からは服が汚れるし、埃っぽいのであまり歓迎されていないが、それでもやはり何かを見つけたときの喜びようは子どものようだ。

「琥珀って、結構出てくるんだね」
「ね。ちいさいのが多かったけど」
「でも持って帰っていいって言うし、あとで磨いてみようよ」
「そうだね。ペーパーと研磨剤はもらったし」
「何か入ってるかな?」
「虫だとちょっと引くかも……」
「でもちょっと楽しみ~」
「ね~」

きゃっきゃ言って喋っているのは、シェラとシャーミアンである。
史学科きっての美女と名高いふたり──若干語弊と誤解あり──を眩しそうに眺める男子たち。

「……やっぱシェラたん可愛いよなぁ」
「……お前、『たん』とか言うなよ、キモいから」
「でも可愛い」
「いや、そりゃあ間違いないけど」
「シャーミアンは美人なのに気取ってなくて」
「オレ、この前ふたりっきりで話しちゃったよ」
「──は?! いつ?! どこで何を?!」
「んふっふっふ……秘密だよ、秘密」
「~~~くっそーーーーーっ!! 貴様、はんらんぐんだな!!」
「いって!! お前、それいつの時代のゲームの話だよ!!」
「うるせー!!」

そんなことを言ってわいわいやっている男たちを尻目に、キャリガンはその可愛らしい顔立ちに勝者の笑みを浮かべてシェラたちの元へ向かった。

「シェラ~、シャーミア~ン」
「あ、キャリー。やっほ」
「お疲れ様。何か見つけた?」
「琥珀が結構出てきたんだ」
「マジで? いいなぁ~」
「キャリーは?」
「ぼくは全然……運がないんだよなぁ……」

がっくりと肩を落とす青年に、シェラはにっこりと微笑んだ。

「あ、じゃあ、琥珀でいいなら分けてあげる」
「──ホント?!」
「うん。いっぱい採れたんだ。良かったら、ポーラにも持って帰ってあげなよ。アイスのお詫び、って言ってさ」
「う~わ~、ありがとう!!」

仔犬のように瞳をきらきらさせる姿に、ひとつ年上のふたりは顔を見合わせてちいさく笑った。

「後で磨くから、一緒にどう?」
「うん! やるやる!!」

シャーミアンの申し出にも満面の笑みを返す。
あ~、やっぱり弟って可愛いなぁ~、と思うシェラだった。
少し離れた場所で、数人の男子たちが採掘した化石を握り潰さんばかりになっていることには、もちろん気づかない。
キャリガンだけが、怨念すらこもった男たちにちらっと視線を流し、にやり、と笑って見せたのだった。
ちょっと気性の荒い男子相手だったら袋叩きに遭っても文句は言えないような態度だが、如何せんそんな度胸を持っているくらいなら直接シェラたちに話しかけに行くくらいのことが出来ていただろう。
そんなわけで、キャリガンはとりあえずは、『美女』ふたりと平和な琥珀磨きを体験することとなったのである。

旅館へ帰って部屋割りの紙を助手の男性から渡されたとき、シェラは「おや?」と首を傾げた。

「すみません」
「うん? なに?」
「あの、部屋割りなんですけど」

わりと端正な造りをしたそばかす顔の助手は、シェラの質問に苦笑を返した。

「あぁ、きみはそれでいいんだ」
「いや、良くないですよ。これ、女の子たちと一緒じゃないですか」
「うん、そうだね」
「ダメですよ。うっかりじゃ済まされないですよ。変態扱いされちゃうじゃないですか」
「きみなら平気だよ」

人当たりの良い笑顔につい流されそうになるが、そういう問題ではない。

「こんな外見してても、私は男なんですよ?」
「そうだね。男だって分かってても、思わず声をかけたくなる美人だ」
「はいはい。で、何で女部屋なんですか? あれですか、私、嫌われ者なんですか?」
「──は?」
「そりゃあ、何か男子たちはあんまり話し掛けてくれないですけど……でも、別に嫌われるような真似はしたことないですし」
「……いや」
「──はっ! それともあれですか! 鵜呑みにして女部屋行ってあたふたしている私をこっそり影から覗いて楽しんで、タイミング見計らって『どっきりでした~』とかいうアレですか?!」
「……もしもし?」
「だ、騙されませんからね! と、とにかく、男部屋にして下さい!」

むぅ、と可愛らしい顔を顰めて見つめてくるシェラに、助手は勢いで「じゃあ俺の部屋に」とか言いそうになり、慌てて理性でそれを押し止めた。
純情可憐な女の子のように見えても、彼は男なのだ。
彼ならイケる、全然イケる、とか思っても、女の子じゃないんだ、自分は女の子が大好きなんだから。
そう自分に言い聞かせる。

「……とりあえず、他の女性たちに訊いてみて?」
「え?」
「きみを男部屋に入れるわけにはいかないんだよ」
「私は男です」
「狼の檻に羊を入れるようなものだろう?」
「意味が分かりません」
「……あまり聞き分けのないことを言うと、──単位あげないよ?」
「──はぁ?!」
「教授にあることないこと進言して、きみの単位は認定されないようにする」
「横暴だ!!」
「女部屋で寝ればいいだけだよ」
「私は男です! 何か間違いがあったらどうするんですか!!」
「ないない。女性たちも、きみを女だと思ってると思うよ」
「冗談はやめて下さい!」
「なんせ、教授が伊達や酔狂で大学に革命を起こすような人だからねぇ」

何を言ってもひらり、ひらり、とかわされてしまい、シェラは地団駄踏みたい気分だった。

「~~~~~~分かりました!! 寝ればいいんでしょう、寝れば!!」

足音も高らかに割り振られた部屋へと向かったシェラに、助手はほっと息を吐いた。

「まったく……ヤン教授が旅館がいいとか言うから……」

ホテルならツインの部屋にひとりだって不審に思われないのに、とぼやいた青年は、風呂のことを言い忘れていた、と思ったが、気づかなかったことにした。


草木も眠る丑三つ時。
出来るだけ足音を立てないようにしてマンションの廊下を歩く。

──なー

「しぃー。ダメだよ、静かにしてないと」

抱えたケージの中に向かって、唇の前で指を立てた。
夜中だというのに目深に帽子を被った姿は、コンビニに入ったらすぐに目をつけられそうだ。
マンションの駐車場までは送ってもらったが、夜中だろうとなんだろうと前髪と眼鏡で顔を隠していないと落ち着かないのだ。
それというのも、彼は自分の顔が好きではなかったのだ。
いくら太陽の光を浴びても焼けない肌も、愛想が悪いと思われる切れ長の目も、女のような少し厚めの唇も。
もともと、大嫌いだった。
だが、それを武器にしたのはマネージャーだった。
ストリートで歌っていた自分の前に現れ、いきなり顎を掴まれたときは殺されるのではないかと思った。
こう言ってはなんだが、長い金髪の男が、すらりとした長身をダークスーツに包んでサングラスをかけて銜え煙草で夜の街を歩いている──どう見ても、『その筋の方』に違いない。
しかも、サングラスをかけていても露になった頬と鼻梁、唇だけで相当な美形であることが分かるだけに、その迫力たるやハンパではない。
顎を掴んだまましげしげと顔中を眺め回され、目にかかるほどに伸ばされていた前髪を長い指で梳き上げる。

「綺麗な顔をしているね──坊や?」

そう言ってサングラスを外して微笑まれ、今度は『売り飛ばされる』と覚悟した。
まぁ、強ち間違ってもいなかったのだが、まさか彼が大手プロダクションの敏腕マネージャーだったとは。

「歌うなら、顔を見せた方がいい。あぁ、でも普段は今まで通り隠しておいで」
「……どうしてですか?」

自分の顔の好き嫌いは別として、思わずそう訊ねていた。
デビューもしておらず、ストリートで歌ってもさして聴衆を集めなかった自分が、有名人のように顔を隠さないと騒がれて歩けないということもあるまい。
今までは、好きでないから出さなかっただけなのだから。
そう言うと、金髪の美青年は呆れたように肩をすくめた。

「──振り返ったらダース単位の子どもがいてもいい、というなら、わたしは止めないが?」

女の考えることはえげつないよ、と綺麗な顔をした男は言った。
当時は、言われたことの意味がよく分からなかった。
だが、デビューからたった五年でトップアーティストの仲間入りをし、数多くのファンを得ることになってようやく彼の正しさが理解出来た。

「有能……なんだよなぁ」

顔だけは抜群に良いが、人当たりも口も滅法悪いマネージャーの端麗な容姿を思い描いてため息を零す。

「……でも鬼だ」

これからの自分のスケジュールを思い描いて苦笑する。
忙しいことは嬉しい。
たくさんのファンが自分の歌を待っていてくれる。
テレビやラジオに出演したり、雑誌にインタビュー記事が載ったりすると反応がある。
多くの才能が現れては消えて行く世界で、いつまで自分の歌は、声は求められるのか。
毎日数時間に及ぶ歌やダンスのレッスン、トレーニングだって、自分を必要としてくれる声があると考えれば苦にはならない。

「でも、鬼だ。な?」

──なー

ガチャッ、と鍵を開けて家に入る。
何日振りだろう、曜日の感覚がない。

「──うわっ、と……」

何かにつまづきそうになり、今度のオフは片付けか、と肩を落とす。
正直なところ、片付けは苦手だ。
隣人の綺麗に整頓された部屋と比べると雑多な印象を受ける。
ハウスクリーニングを呼べばいいのだが、どうにも人に部屋を弄られるのが好きになれない。
それを言うと鬼マネージャーがにっこり笑って、

「全部捨てればいいだろう? ギターとピアノ以外の、何が必要だと?」

とか言ってくるのだ。
とんでもない話だ。
そりゃあ、いらないものもあるけれど、必要なものがたくさん、たくさんあるのだ。

「さ、ビアンカ。明日の昼まで、寝坊するぞ」

──んなー

ケージから仔猫を出し、額をひと撫でしておろしてやる。
一目散に窓辺へと向かったお姫様に、思わず苦笑する。

「こらこら。こんな夜中にお忍びか?」

お転婆なお姫様だ、と歩み寄ってひょい、と抱き上げる。
抗議の声を上げる猫に、「しぃー」っと指を立てた。

「睡眠不足は美容に悪いんだよ。どうせなら、たっぷり寝て美人になって会いに行こうな」

──なーなー

「はいはい、じゃあ寝るぞ」

──なー

ここ数日で数時間しか眠っていない青年は、ふわぁぁぁ、とあくびをすると寝室へ向かった。
寝間着に着替え、ベッドに入って胸元に仔猫を抱えると、「おやすみ」と呟いた。

閉じた瞼の奥に、銀色の光を思い浮かべて。


何なんだ、と可愛い顔を鬼のように顰め、シェラは一応女部屋の戸を叩いた。

「は~い」

出てきた同期生に、シェラは申し訳なさそうな顔になった。
絶対、入れてくれるわけがないんだ。
追い出されれば、あの助手も少しは考える気になるだろう。

「……あのね、冗談だと思うんだけど……なんか、私、女部屋で寝ろって言われて」

冗談だから怒らないでね、という視線を向けたシェラに、くりくりとした緑の目の女子大生はにっこりと微笑んだ。

「はいは~い、どうぞ~」
「………………………………へ?」
「どうぞ? お布団はまだ敷かれてないから、寝る場所はあとで皆が来てから決めましょう」
「………………………………もしもし?」
「なぁに?」
「私、男なんだけど……?」
「あぁ、そういえばそうよね。でもいいわよ、シェラなら」
「…………………………………………………………はい」

何だか、喜んでいいのか悲しんでいいのか、よく分からない状態だ。
「お邪魔します」と呟いて部屋に入り、隅っこの隅っこに荷物を置く。

──……どうすんだよ、皆、朝ここで着替えるんだぞ?!

いやいや、その前に起きて出て行けばいいだけの話だ、そうだ、そうだ。
そう自分に言い聞かせたシェラは、「シェラの分ね」と浴衣を手渡された。

「……随分、可愛らしい模様だね」
「ね~。ここ、女性限定で浴衣サービスしてくれるんだって」
「うん、私は男だけどね」
「でも、シェラの分も数あるから」
「うん、おかしいよね」
「大丈夫よ、きっと似合うから~」

おっとりふわふわと話す彼女に毒気を抜かれ、シェラはありがたく浴衣を受け取ると汗と埃を流しに大浴場へ向かった。
女部屋と浴衣の件は、この際置いておくとしよう。
女性と同じ部屋で寝ることに関して、抵抗というものはないのだ。
しかし、シェラはこれでも一応男の端くれであるから、女性の方が良い気分ではないだろう、と思うのだが、なかなかどうして、豪胆な性格をした女性が多いものだ。
浴衣だとて、ちいさい頃からシェラがひらひらふわふわした服装をすることを両親や兄が喜んでいたので、嫌なわけではない。
女の子が欲しかった、と口には出さないが思っていることは想像に難くない両親なので、彼らが喜ぶならそれでいいのだ。
こういうときに気分の切り替えが早い自分の性格はありがたい。

「温泉ってのが嬉しいよねぇ。大きなお風呂にのんびり浸かって、露天風呂とか入っちゃって。あぁ、冬場だったら雪見酒とかいいなぁ」

そう、たとえば。

ちらちらと舞い落ちる純白のボタン雪。
立ち上る湯気に霞み、熱い湯に触れると一瞬にして溶けてしまう。
その、儚いまでの美しさ。

「……入ってもいい?」

掛けられた声に振り向き、雪明りにその美貌を照らされた男は薄く微笑む。

「風邪をひくよ。早くおいで」

手を差し出せば、はにかんだ雪の精はそっとその手を取って湯に脚をつけた。

「あつ……」
「身体、冷えてる」

心配そうに見上げてくる藍色の瞳に、うっとりとした表情で返す。

「……じゃあ……あたためて……?」

覆いかぶさるようにして、唇を求めた。

「──ぐふっ」

露天風呂つきの離れという贅沢に、子どものようにはしゃいでしまった。
そんな自分を笑った彼は、運ばれてきた食べきれないほどの料理に目をきらきらさせている。
浴衣姿もよく似合っている青年の稚気に、思わず吹き出してしまった。

「子どもみたい」
「だって、どれも綺麗で美味しそうだから」
「芸能人だったら、美味しいものたくさん食べてるでしょう?」
「そんなことないよ。食事は専ら移動の車の中だし、たまに外食してもあんまりゆっくり出来ないし……」
「ファンに見つかったりしないの?」
「そこは、ほら」

言って、前髪を下ろして指で眼鏡を作ってみせる。

「あー、絶対分かんない」
「時々自分でも哀しくなるくらい、気づかれないんだ」
「……今はいいの? 仲居さん、来るかも知れないよ?」

ちょっと意地悪な質問だな、と自覚しつつ訊ねると、青年は前髪を上げて生来の美貌を露わにし、にっこりと微笑んだ。

「──シェラとだったら、フライデーされても構わないよ」

「──とか何とか言っちゃって!!」

きゃーーーーーっ、とひとりで興奮しながら男湯の脱衣所に入っていくと、「「「ひょえーーーーーーーっ?!」」」という奇声が上がった。
何だ、と思ってそちらを見れば、顔見知りの男子学生たちが前を隠して青くなったり赤くなったりしている。

「……何してるの?」

首を傾げるシェラに、勇気ある学生のひとりが声を張り上げた。

「な、何してるの、はこっちの台詞だよ!! 何で入ってくるんだよ!!」
「へ? だって、ここお風呂でしょ?」
「そうだけど、何でシェラがこっち入ってくるんだよ!!」
「は?」
「こっち男湯だぞ!!」
「………………あのぉ……もしもし?」
「びっくりさせんなよ! シェラが間違って入って来たってオレたちが痴漢呼ばわりされるんだぞ?!」
「いや……」
「そうだよ! こっちは全然そんなつもりなくたって、勝手に勘違いされるんだからな?!」
「あの」
「おれたちの苦労も分かってくれよ!!」
「…………」

せっかくいい気分で露天風呂に入ろうとしていたところを邪魔され、しかも勝手なことばかり言ってくる男どもに、シェラの額に青筋が立った。

「──お前らの粗末なもの見せられた私の身にもなってみろ!!」

ふんっ! と鼻息も荒く脱衣所を出たシェラは、仕方なく女部屋へと戻ることにした。
寝る場所はともかく、女湯に踏み込むわけにはいかない。
シャーミアンは大丈夫だと言っていたが、あくまで笑い話としてのことで、本気ではない──はずだ。
確か、部屋にも備え付けの風呂があったから、女性たちに許可を得て使わせてもらおう。

「……何だよ、皆して」

思わず涙ぐむ。
温泉に来たのに、露天風呂に入れないなんて最低だ。

「私だって、立派な男だっ!!」

ビシッ、とタオルで壁を殴りつける。
ビシッ、ビシッとやっていると、後ろからのんびりとした声が掛けられた。

「おやぁ~? 随分と荒れてるねぇ」
「──ヤン先生」

振り返った先には、見る人によってはハンサムに見えなくもない黒髪の男がいた。
齢三十にして教授に就任した秀才である。
その飾らない性格と、本人は否定しているが巧みな話術は、学生たちからの支持が篤い。

「どうかしたのかね?」
「あぁ……私がこんな外見をしているからか、男部屋を追い出されて、今また男湯にも入れてもらえなくて……」
「なるほど。困ったものだね」
「そうなんです……温泉に来たのに温泉入れないって、楽しみの九割奪われました……」
「お察しするよ」

そうだ、と若き教授は手を叩いた。

「確か、ここは露天風呂の貸切が出来たはずだよ。女将さんに頼んであげよう」
「──え? そ、そんな、先生のお手を煩わせるようなことは……貸切に出来るんだったら、私が自分で頼みますから!」
「いいんだ、いいんだ。気にすることはないよ」

にこにこと愛想の良い教授は、ひらひらと手を振ると行ってしまった。

「……いいのかな……」

心配になったシェラは、とことこと教授のあとをついていくことにした。




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